「全てにやさしいダイビングのための基盤整備に向けて」
森山 由雄 (沖縄県警所属 海上安全指導員)
海上安全指導員による現場からの視点として、次の事柄について提言申し上げます。
1.「マル優」システムの活用
沖縄県水上安全条例が平成6年に施行され、その傘下関係事業所による安全対策等の努力により、沖縄県海浜・海域での水難事故も年を追う毎に減少傾向にあり、関係機関(県警)の水難事故防止の指導の成果だと評価しております。
この水上安全条例で最も効果的で実績を上げているのが「マル優」制度であり、同制度は、県公安委員会が「水上安全系列」に定める安全対策基準が満たされるていると認めたマリンレジャー事業者を「安全対策優良海域レジャー提供業者」いわゆる「マル優」事業者として指定する制度です。指定を受けたダイビング事業者は、自ら安全対策と自己啓発を行い、安全意識の高揚を常に図ることによって水難事故防止に寄与する点が大である。
メリットとして「マル優」を指定された事業所は県公報で告示され、また(財)沖縄観光コンベンションビューローでも紹介され、関係機関を通じて「マル優」の指定を受けた事業所の利用をPRしているようですが、全国的にはその趣旨は活用されていないようです。安全の面からの基盤整備として、この「マル優」制度の意義・存在を全国に向けてアピールしてゆきたい。
2.沖縄県における基盤整備
沖縄マリンレジャーセイフティービューロー(OMSB)は、水上安全条例に関連して設置され、観光立県を目指す沖縄県におけるマリンレジャーの安全と普及・振興を目的に、例年主な事業として以下の活動を実施している。
*安全対策広報活動
*マリンレジャー安全フェアの開催
*マリンレジャースタッフ等の講習会の開催
*ダイビングポイントの海域調査や地形、水深、潮流、生物等の調査
*ダイビングポイントマップを作製し、ダイビングガイド等の活用に提供
*マリンレジャースポーツインストラクターの養成訓練の実施
*水難事故防止運動(6月1日〜8月31日、主催:県警・OMSB)
これらの活動を積極的に展開して、この素晴らしい自然環境に恵まれた沖縄の海域を、安全で国民に親しまれるマリンレジャーの提供と振興・発展に大きく寄与しているのがOMSBの存在だと評価しております。そのOMSBを支えているのが、賛助会員であるダイビング事業者を含む海域レジャー提供業者です。各ダイビング事業所に属するインストラクターは、OMSBの事業に積極的に協力して観光ダイバーやファンダイビングのガイドに安全を図り、活躍しております。
沖縄県でダイビングされ、活動されている全国の方々にも、是非これらのシステムや取り組みについて御理解いただき、御支援をいただきたいと希望します。
3.海域友好利用
昭和47年に漁業調整規則が施行されてから、漁業者とレジャーダイバーとの間には様々な問題が発生し、その解決に地域によっては問題点をお互いに前向きに話し合って友好促進している海域もあれば、問題解決を扶らせ裁判まで持ち込んでいる海域もあります。ダイバーの行く海域は全て漁業権に占有されているので、漁業者との友好促進は避けては通れません。その観点からすれば、漁業関係者を何らかの形で「ダイビングサミットin沖縄」に招聴し、発言の機会を与えることによって友好促進を図るべきかと考えます。
4.その他
残念ながら、海域におけるダイビング船等からの生理的な排泄や投棄(ビニール袋)等がたまに見られます。また観光ダイバー等が魚介類を採取しないようにとの指導要請や、たまにダイビング中のアンカリング等でコーラル等を破損する者に対する指導要請もあります。
沖縄本島を始め、数多くの離島海域には多くのダイビング事業所が点在しておりますが、それぞれに課題を抱えていて、その声を取り上げる機会が少ないのが現状です。「ダイビングサミットin沖縄」では、ダイビング事業者や関係組織にとって発言が与えられるチャンスだと考えます。
発言の機会が与えられている、沖縄ダイビング安全対策協議会(安対協会員、沖縄本島・渡嘉敷島・久米島)の他、ダイビングのメッカとして全国的に人気のある座間味島、宮古島、石垣島、与那国島等のダイビング事業者及びその組織にもダイビングサミット開催の趣旨を伝え、それぞれの意見等を集約して、ダイビングサミットの趣旨に生かし、沖縄宣言「ダイビングアピール」が将来のダイビング界の発展に寄与することを願うものです。